というタランチュラを聞いたことがありますでしょうか。
実は現在日本においてこれらは同種に充てられたコモンネームです。
ではこの種類はコスタリカとグアテマラに分布しており、
両国から輸入されているのでしょうか。
それも違います。
そんな本種について話していこうと思います。
タイガーランプタランチュラとは
タイガーランプタランチュラとは属Davusの総称です。
昔はCyclosternumという属でしたが現在は使われておりません。
sternumというのは胸板と呼ばれる、クモの裏側にある部分のことです。
歩脚基節(coxa)に囲まれた部分です。cyclo-は円という意味ですね。
(理系の人は有機化学でシクロアルカンとかシクロアルケンとかでやりましたね...)
属Davusは現在以下4種が記載されています。
・Davus fasciatus
・Davus pentaloris
・Davus ruficeps
・Davus santos
旧 D. drymusetesは D. fasciatusのシノニムに、
旧 D. morosus及び旧 D. zebratusは D. ruficepsのシノニムに、
旧 D. macropus は別属 Pseudoschizopelmaに移行となりました。
参照
Gabriel R., 2016 Revised taxonomic placement of the species in the Central American genera Davus O. Pickard-Cambridge, 1892, Metriopelma Becker, 1878, and Schizopelma F. O. Pickard-Cambridge, 1897, with comments on species in related genera (Araneae: Theraphosidae). Arachnology 17(2): 61-92.
それぞれの分布域を見ていきましょう。
Davus fasciatus
まず、属の代表種である D. fasciatus について。
これがコスタリカ固有種です。
つまり、これが本当の「コスリカンタイガーランプ」です。
最大全長は12cmになり、属内最大種と言われています。
背甲は黒色で、腹部に♡模様が出来ます(個体差アリ)。
体色は黒色と茶色で構成されています。
Davus pentaloris
そして D. pentaloris。
こちらはメキシコとグアテマラに分布します。
「グアテマランタイガーランプ」という呼称は適当と言えます。
背甲は橙色です。腹部の♡模様の部分は丸に近い形になります(個体差アリ)。
体色は黒色と赤色で構成されています。
腹部の模様はかなり個体差があるとされています。
Davus ruficeps
Davus ruficepsはコスタリカとニカラグアに分布する種類です。
「コスタリカンタイガーランプ」というコモンネームが存在すると、
本種はどうなるのか?といった感じです。
本種もコスタリカに分布するタイガーランプタランチュラなのですから。
背甲は黄褐色で、メスの腹部には♡模様が出来ます(個体差アリ)。
一方、オスは腹部は虎柄とは言いにくいです。
♡模様と横線が存在する程度です(個体差アリ)。
体色は黒色と黄褐色により構成されています。
Davus santos
Davus santos は
成熟メスの背甲は黒く、腹部の毛が黄褐色で、
腹部全体が黄褐色に見えます。
横から見るとギザギザと黄褐色の波線が見えます。
とても「タイガーランプ」とは言い難い表現をしております。
日本で流通している種類とは
日本で流通しているコスタリカンタイガーランプとはD. fasciatus のことなのでしょうか。
流通当時はDavus fasciatus またはCyclosternum fasciatum という学名と共に
「コスタリカンタイガーランプ」と呼ばれていた個体でしたが、
実際見てみると背甲は赤色で、基本色は黒色と赤色。
そう、Davus pentalorisだったのです。
このタランチュラはヨーロッパで繁殖された個体が日本で流通しており、
ヨーロッパ人が誤ってfasciatus表記にしてしまったことが原因だと思われます。
現在では誤りが発覚し、ヨーロッパではpentaloris表記になっています。
しかし日本ではいまだに「コスタリカンタイガーランプ」というコモンネームが使われているところが多いです。
コスタリカにいない種類なのに。
当店は今後Davus pentalorisにはグアテマランタイガーランプというコモンネームを使用していきます。
他のお店の「コスタリカンタイガーランプ」はこの「グアテマランタイガーランプ」と
同種である可能性が高いです。
また、現在世界的はほぼ流通がありませんがD. fasciatusが流通した場合には
コスタリカンタイガーランプというコモンネームが適正と判断し、
その名で販売することがあるかもしれません。
まあその時になってみないとわかりませんが。
コスリカにはD. ruficepsもいますしね。
なかなかにややこしい話ですがご理解頂けましたでしょうか。