日本には、割と頻繁にペルーからオオムカデが輸入されています。今回はそんなペルー産オオムカデについて触れていきます。
輸入される種類としては、
「ペルビアンホワイトレッグジャイアント」と呼ばれる種類と、
「ガラパゴスジャイアント」と呼ばれる種類、
「ペルビアンオレンジ(ロブスタジャイアント)」と呼ばれる種類、
「ペルビアンタイガー」と呼ばれる種類、
「ペルビアンブラックヘッド」と呼ばれる種類があげられます。
輸入される際の学名(インボイス)では
「ペルビアンホワイトレッグジャイアント」はScolopendra gigantea、
「ガラパゴスジャイアント」はScolopendra galapagoensis、
「ペルビアンオレンジ(ロブスタジャイアント)」はScolopendra robusta、
「ペルビアンタイガー」はScolopendra viridicornis、
「ペルビアンブラックヘッド」はScolopendra hermosa となっております。
ペルーのトリコに聞いてもこの学名を言ってきました。彼らは何の疑いも持っていません。
但しペルビアンオレンジに関しては過去にScolopendra crudelis という学名が使われていた過去があるのと、最近ではScolopendra sp. とされているようです。
果たしてこの学名は正しいのでしょうか。調べていきます。
S. gigantea について
Scolopendra giganteaとは、リンネ氏によって1758年に命名された種類で、
オオムカデ科(Scolopendridae)の中ではかなり古い名前です。
しかし、ホロタイプが保存されていたという証拠は残っておらず、
ロンドンのリンネアン協会のリンネアン・コレクションにも、
アメリカやヨーロッパの主要な自然史博物館にも存在していません。
その為、2000年にネオタイプが指定されました。
Shelley., R. M. &S. B. Kiser. 2000. Neotype designation and a diagnostic account for the centipede, Scolopendra gigantea L. 1758, with an account of S. galapagoensis Bollman 1889 (Chilopoda Scolopendromorpha Scolopendridae). Tropical Zoology,13:1, 159-170.
本種はAttems氏によって南アメリカ北部に分布する体長の大きなScolopendra属の種類を指すとされました。本種は30cm以上になるとされており、種小名は妥当です。
Attems., C. 1930. Myriapoda 2. Scolopendromorpha. Das Tierreich. 54: 1-308.
分布域はアメリカ領バージン諸島、ハイチ、メキシコ、ホンジュラス、コロンビア、ベネズエラ(マルガリータ島を含む)、アルバ、キュラソー、トリニダードとされていますがいくつかは怪しいです。
ジャマイカにも分布するという説がありますが、これはリンネ氏が述べていただけで証拠がありません。ジャマイカにはS. alternans とS. subspinipes が分布していて、これらはカリブ海の島々でよく見られ、都市部でもよく見られる種類です。リンネ氏が本種を提唱した際のスケッチにムカデの同定に必要な特徴が見られないことから、これらのいずれかであった可能性が示唆されています。そうなると、元々リンネ氏が「S. gigantea」としたものは現在のS. giganteaとは別種であった可能性が出てきます。また、Leach氏が1815年にS. gigas という名前で現在S. gigantea と思われている種類を記載しているので、こちらが最初の記載となる可能性があります(Pocock, 1895)。
Pocock., R. I. 1895-1910. Chilopoda and Diplopoda. Biologia Centrali-Americana, 217 pp. [Fascicle treating S. gigantea distributed in December 1895].
したがって、2000年にデンマークのコペンハーゲン大学動物学博物館にある、ベネズエラ産の標本がネオタイプとされました。大きな個体ではありませんでしたが、状態は素晴らしく全ての歩脚がありました。
S. giganteaのシノニムには
Scolopendra gigas
Scolopendra insignis
Scolopendra prasinipes
Scolopendra gigantea gigantea
があります。
先ほど説明しましたがホロタイプは存在しないか行方不明であるので、検証の仕様がありません。
ネオタイプはベネズエラのバレンシアというところで採取された個体です。
形態に関して、
・触角に繊毛が疎らに生えている節が7~10節存在する
・殆どの歩脚腿節には1つまたは複数の突起がある
とあります。
疎らに繊毛が生えている触角の節は7~10節ですが、殆どの個体は8節または9節だそうです。
触角には 繊毛が密に生えている節と疎らに生えている節があります。
歩脚腿節の棘に関しては種内変異が激しいようです。
分布域に関してはオランダ領アルバ、オランダ領キュラソー、ベネズエラ領マルガリータ島、ベネズエラ本土北部、トリニダード、コロンビアとされています。先ほど紹介した、
アメリカ領ヴァージン諸島、ハイチ、メキシコ、ホンジュラスは移入又はラベルミスと考えられています。これらの地域からはそれぞれ1個体しか得られておらず、本種はいずれの地域にも定着していないようです。ブラジルやチリの情報もありますが(Kraepelin, 1903; Attems, 1930)、非常に疑わしいです。
KRAEPELIN K. 1903. Revision der Scolopendriden. Mitteilungen aus dem Naturhistorischen Museum in Hamburg 20: 1-276.
つまりペルーに分布しているとする情報はありません。。。
また、本種の分布域には本種以外にも、本種に匹敵する巨大ムカデが存在するので大きさは判別に使えないとされています。
2000年の論文ではハイチ産(?)1個体とメキシコ産(?)1個体、ホンジュラス産(?)1個体、コロンビア産5個体、ベネズエラ21個体、トリニダード産7個体、アルバ産12個体、キュラソー産5個体、マルガリータ産4個体が検視されています。
同定要素である
触角の、繊毛が疎らに生えている節の数については
ハイチ産(?) 8節
メキシコ産(?) 8節
ホンジュラス産(?) 9節
コロンビア産 8~9節
ベネズエラ産 7~9節
トリニダード産 9~10節
アルバ産 8~10節
キュラソー産 9~10節
マルガリータ島産 8~9節
棘のある歩脚の数は(脚欠損個体有)
ハイチ産(?) 9~12節
メキシコ産(?) 3~4節
ホンジュラス産(?) 5~6節
コロンビア産 0~13節
ベネズエラ産 1~15節
トリニダード産 3~12節
アルバ産 2~15節
キュラソー産 8~15節
マルガリータ島産 1~14節
という結果に。
S. galapagoensisについて
Scolopendra galapagoensis とは、
Bollman氏によって1889年に記載された種類です。
Bollman., C.H. 1889. Myriapoda. In: L.O. Howard (ed.), Scientific results of explorations by the U. S. Fish. Commission Steamer 'Albatross', Proceedings of the United States National Museum . 12: 211-216.
2000年の論文によると、本種のシノニムに
Scolopendra gigantea weyrauchi
Hemiscolopendra galapagosa
が存在するとされています。
S. giganteaの亜種であったS. gigantea weyrauchi は現在S. galapagoensisであるということです。
S. galapagoensis のホロタイプとパラタイプ1個体は、1887~1888年のアルバトロス号航海中に、米国魚類委員会によって、エクアドルのガラパゴス諸島チャタム島で採集されました。
1887年~1888年にガラパゴス諸島 ジェームス島でパラタイプ1個体が採取され、同じ時期にガラパゴス諸島 アルベマール島(イサベラ島)でアルバトロス号の航海中にパラタイプ1個体が採集されました。
この様に、ホロタイプ及びパラタイプは全てガラパゴス諸島で採取されています。
シノニムとなったS. gigantea weyrauchi のタイプ産地はペルー北部のハエン近くのプカラです。
パラタイプは、トルヒーリョ近郊のカンパナ山と、
アンデス山脈西側斜面のパカスマヨとカハマルカの間のタンボ・ティンゴで採集されました。
その他ココス島での標本も存在します。
ガラパゴス諸島やココス島に生息しているのは、大陸から流されてきたとする説が有力です(Shelly & Kiser, 2000)。
本種の分布域はオーストラリア領ココス島、エクアドル本土、エクアドル領ガラパゴス諸島、ペルーです。
よって、ペルーから本種が輸出されていても産地としては可笑しくはない、ということになります。では、形態について詳しく見ていきましょう。
本種の形態として、
・触角に繊毛が疎らに生えている節が4~7節存在する
・通常、第1歩脚の腿節には背側に1本の突起がある。
とあります。
S. gigantea weyrauchi とされていた標本は、ガラパゴス諸島産のS. galapagoensis の標本と同様に、触角の4~7節は繊毛が疎らな節で、通常1本の歩脚(第1脚)のみに腿節の棘があることで本種のシノニムが妥当と判断されています。
今回の論文ではココス島産1個体とガラパゴス諸島産25個体、エクアドル産1個体、ペルー産5個体を検視しています。
同定要素である
触角の、繊毛が疎らに生えている節の数については
ココス島産 4節
ガラパゴス諸島産 4~7節
エクアドル産 5節
ペルー産 4~5節
棘のある歩脚の数は(脚欠損個体有)
ココス島産 1脚
ガラパゴス諸島産 なし / 1脚
エクアドル産 なし / 1脚
ペルー産 なし/ 1脚 / 2脚
これを見る限り分布域は被っていないので、分布域からある程度同定は出来そうですね。
ガラパゴス諸島で見つかったムカデの写真がありました。
分布域も、疎らな繊毛の節の数もS. galapagoensis と一致します。
これが本物のガラパゴエンシスでしょう。
形態的にみると、S. gigantea 及びS. galapagoensis の同定の鍵となるのは
1.触角の繊毛が疎らに生えている節の数
2.歩脚腿節の棘がどれだけ存在するのか
となってきそうです。但しある程度種内変異はあります。
1.では
S. gigantea は7~10節で、大抵8節又は9節。
S. galapagoensis は4~7節で、大抵4節又は5節。
7節だと両方のレンジに入っているものの、7節の個体は両種とも少ない様です。
両種を比べた場合、7節より少なければS. galapagoensis、多ければS. gigantea となります。
2.では
S. gigantea はほとんどの歩脚に棘が存在し、
S. galapagoensis はほとんどの個体が1対存在するとされています。
S. galapagoensis に関しては棘が存在しない個体もいます。
ペルビアンホワイトレッグジャイアントとは
Scolopendra gigantea として日本に輸入されています。
体色は、胴節は赤褐色、歩脚は根元は橙色で先端に向かって白くなり、頭部及び触角は赤色。繊毛が密に生えた節はやや茶色い。
そもそも怪しいのは分布域。S. gigantea の分布域にペルーは入っておりません。
ただそれだけで判断するのもいけないので詳しく見ていきましょう。
上段から生体、
口器裏側、歩脚
曳航肢表側、裏側
1.触角の繊毛が疎らに生えている節の数
過去輸入された個体等いろいろ見てみると5節~6節の個体が多い様です。
この時点でS. gigantea の可能性は消えました。
5〜6節ということはS. galapagoensisのレンジに入っております。
但し、 この種類は触角の根元2節が"密な節"で、
そこから"疎らな節"が6節程並びます。
先程紹介したガラパゴス諸島のオオムカデは根元からは"疎らな節"になっていたため、少し異なります。
2.歩脚腿節の棘がどれだけ存在するのか
こちらは、写真からではなかなか難しいので、
今回調べた標本1個体のみの情報とはなってしまいますが、
歩脚Prefemurに棘はあるものの、
Femur(腿節)に棘は見当たりませんでした。
但し、いくつかの歩脚は欠損していました。
生息域や歩脚突起から判断するとペルビアンホワイトレッグジャイアントはS. galapagoensis の特徴と重なります。
S. gigantea ブラックモルフとは
近年日本に流通した Scolopendra gigantea "black morph"というものについて少しお話します。
これはペルー産ではなく、ベネズエラ マルガリータ島産です。
こちらに関してはベネズエラからの直便ではなく、
ベネズエラからアメリカに運ばれ、韓国に運ばれ、日本に来た、というルートがメインではないでしょうか。
まだ日本で流通する前、韓国人に買わないかと言われて値段を聞いてビビった覚えがあります。
その後他店が入荷した際には割と好評だったみたいですね。
私の韓国人の親友がいるのですが、
彼はおそらく世界で初めてこのブラックモルフの繁殖に成功しています。天才。
体色は、胴節は黒く、歩脚は黒色基調に、関節は黄色が入る。触角はほとんどが黒色で、繊毛が密に生えている節は褐色。
さて、この種類は日本で「ベネズエラジャイアント」、「ベネズエラブラック」、「ブラックギガンティア」、「ペルビアンジャイアントブラックモルフ」、「ペルビアンブラック」、「黒ペルビ」などと呼ばれています。
最初の3つは良いですが後半3つに関しては命名者に知識がなかったんでしょうか。
S. gigantea = ペルビアンジャイアントって感じで短絡的に付けた感じが漂ってきます。
先ほども述べたように、S. gigantea の公式記録にペルーは入っていません。
一方、マルガリータ島はばっちり入っています。
つまり、これこそが真のS. gigantea なのではないかということです。
(リンネ氏の記載していた個体ではなくパラタイプと比較しています。)
こちらは現在検証できる標本が手元になかったのですが、過去入荷された個体を見てみると繊毛が疎らに生えた触角の節の数は9節前後であると分かりました。
こちらもS. gigantea の特徴と一致しますね。
つまり、これこそがS. gigantea ということでほぼ間違いないでしょう。
ベネズエラ産の「ベネズエランゴールデン」と呼ばれる巨大ムカデが輸入されたことがありました。
体色は、胴節は黒色基調で節後縁及び横縁は黄色、歩脚は黄色、触覚は赤色、牙は橙色です。
繊毛が疎らに生えた触角は9節前後。分布域から照らし合わせるとこちらもS. gigantea である可能性があります。ベネズエラという情報以上詳しい産地情報がありませんが、ブラックモルフと共に日本に入ってきたこともあることから、同じマルガリータ島産ではないかと言われたりしていますが、集荷されることも当然あり得るのでテキトーなことは言えません。
ガラパゴスジャイアントとは
Scolopendra galapagoensis の学名でペルーから輸入されてきます。
体色は胴節が黒色で、歩脚は黄色基調に黒色が節に入ります。
若い頃は黒色がほとんど入りません。かなり大きくならないと黒色は強くなりません。
触角は黒く、繊毛が密に生えている節は赤色になります。
先述したブラックギガンティアと酷似しますが、
本個体は歩脚が黄色ベースなのに対し、
ブラックギガンティアは黒色の面積の方が広いです。
また、触角のは繊毛が密に生えている節の数の影響で、
本個体は半分程黒色、半分程赤色となり、
ブラックギガンティアではほとんど黒色となるので判別は容易かと思われます。
本種がgalapagoensisであるという話は分布域で見ればあり得るお話です。詳しく、見ていきましょう。
上段から生体
口器裏側、歩脚
曳航肢表側、裏側
1. 触角の繊毛が疎らに生えている節の数
過去日本に輸入された個体も確認してみると、殆どが6節前後。但し、先程のペルビアンホワイトレッグが根元2節が"密な節"であったのに対し、こちらは根元から"疎らな節"があります。これは先程紹介したガラパゴス諸島のオオムカデと一致します。
2.歩脚腿節の棘がどれだけ存在するのか
こちらも、写真からではなかなか難しいので、今回調べた標本1個体のみの情報とはなってしまいますが、歩脚Prefemurに棘はあるものの、Femur(腿節)に棘は見当たりませんでした。但し、いくつかの歩脚は欠損していました。
生息域や2つの特徴はS. galapagoensis と重なります。
よって、本種はS. galapagoensis とするのが妥当と思います。
S. robustaについて
S. robusta はKraepelin氏が1903年に発表した種です。
Kraepelin K. 1903. Revision der Scolopendriden, Jahrbuch der Hamburgischen Wissenschaftlichen Anstalten. (2)20: 1-276.
分布域はメキシコ。
ペルーとはかけ離れています。
つまり分布域から考えるとペルーからこの学名で輸入される種類とは全くの別種ということですね。また、本物S. robusta は大型種ではありません。
原記載論文の内容から推測し、S. robusta はS. herosの シノニムなのではないかとする意見もあります。
実際に、S. robusta がいるとされているメキシコのヌエボ・レオン州からS. heros が採取されているという事実があるようです。
つまり、S. robusta は完全に北米種スコロペンドラであるということです。ペルーから採取されているという説はなかなかに厳しいと思います。
S. crudelis について
Scolopendra crudelis について。Koch氏によって1847年に報告された種類です。
Koch C.L. 1847. System der Myriapoden. In: Herrich-Schäffer L. (ed.), Kritische Revision der Insectenfauna Deutschlands. Pustet, Regensburg. 3:1-270.
フランス領グアドループに分布する種類です。ペルーは遠すぎますね。
S. angulata について
Scolopendra angulata はNewport氏によって1844年に発表された種類です。
分布域はトリニダード (タイプ産地)、ベネズエラ、ブラジルです。
ペルーが分布域に入っていません。。。
触角は17節から成り、根元5節以降繊毛が密に存在します。つまり繊毛が疎らな節は4節、密な節は13節となります。第2~第20 歩脚腿節には突起が存在します。
Schileyko & Arkady A. 2014. A contribution to the centipede fauna of Venezuela (Chilopoda: Scolopendromorpha). Zootaxa 3821 (1): 151-192.
分布域からするとやや現実的でないような気がします。とはいえ隣国であるので可能性がないわけではありませんが。
ペルビアンオレンジとは
主にScolopendra robusta という名前で輸入されていますが、
先述したようにS. robusta はメキシコに分布する種類で、ほぼあり得ません。
ペルーから輸入される「ペルビアンオレンジ(ロブスタジャイアント)」の中には時々
Scolopendra sp. "robusta"
という表記も見かけます。これだったら「剛健な」という意味の単語を無理矢理使ったんだなということが分かりますね。ちょっと無理があるような...
また、
Scolopendra gigantea robusta や
Scolopendra gigantea "robusta"という表記も見かけます。
この種類に関しては
1.S. robusta 説
2.S. gigantea 説
3.S. galapagoensis 説
4.S. angulata 説
5.S. crudelis 説
がありました。
ペルビアンオレンジ(ロブスタジャイアント)に関しては今手元に標本がありませんので詳しい検証は出来ませんでした。ゴメンナサイ...
体色は、胴節が橙色で後縁及び横縁はやや色が明るい。
歩脚と触覚は黄色、といった感じです。
過去に日本に輸入された個体を見ながら触覚の繊毛について確認すると、
根元4節は繊毛が疎らで、5節以降に繊毛が密な個体や、
根元6節以降に繊毛が密に生えている個体がいました。
S. angulata やS. galapagoensis のレンジに入っております。
生息域からするとS. angulata はやや無理があるので、
S. galapagoensis の方が近いかなと思います。
但し触覚の特徴のみの判断ですのでもう少し細部まで見る必要があります。
標本が手に入り次第検証します。一旦保留で。
S. hermosa について
Scolopendra hermosa に関してはChamberlin氏によって1941年に発表された種類です。
Chamberlin R.V. 1941. On a collection of millipedes and centipedes from Northeastern Peru. Bulletin of the American Museum of Natural History. 78: 473-535.
分布域はペルー。第18~21歩脚腿節に棘状突起が存在しているようです。
John G. E. Lewis . 2016. On the consistency of some taxonomic characters in the Scolopendromorpha and comments on the scolopocryptopid subfamily Kethopinae (Myriapoda: Chilopoda). Acta Soc. Zool. Bohem. 80: 21-31.
記載論文を読むと、
背中は暗いオリーブ色で、第1背板・前胸部・頭部はほぼ栗色。触角はオリーブ色。歩脚の付け根付近は褐色、先端側はオリーブ色。節はオリーブ色。
触角は短く、17節から成る。根元4節は光沢がある。(=根元4節が"疎らな節"+13節が"密な節"?)
基本的に第1歩脚には突起が2対、第2~19歩脚には突起が1対存在する。
体長は110mm。とありました。
ペルビアンブラックヘッドとは
Scolopendra hermosa の名前で輸入される種類です。
体色は胴節が暗緑色で頭部は橙色が入るが黒色基調。歩脚は根元が褐色で先端に向けて黒くなる。触角は暗緑色、繊毛が密にある節は褐色に見えます。
こちらも検証標本が手元にありません。ゴメンナサイ。
但し、過去に輸入された個体を見ると、S. hermosa の記載論文にあった体長と体色はほぼ一致しています。
触角の根元から5節目以降は繊毛が密にあることも記載論文の記述通りです。
あまり情報のないS. hermosa ですが、この学名で良いと思います。
S. viridicornis について
Scolopendra viridicornis とはNewport氏によって1844年に発表された種類です。基亜種以外にScolopendra viridicornis nigra という亜種が存在します。
分布域は、
基亜種がブラジル、フランス領ギアナ、ガイアナ、ベネズエラで、
亜種nigra がパラグアイとブラジルです。
ペルーはなさそうですね。一応隣国ではありますが。
ペルビアンタイガーとは
Scolopendra viridicornis という名前で輸入されています。
体色は、胴節は橙色で前縁が黒い、
歩脚は根元は橙色で、先端に向けて黄色くなり、
触角は黄色です。
S. viridicornisの分布域は主にブラジルで、ペルーからは報告がありません。
よって、やや懐疑的です。
こちらも検証標本がありませんが、過去の個体は触角根元4節まで繊毛が疎らで、
それ以降が繊毛が密である個体が多かったです。
S. angulata やS. galapagoensis と重なります。S. angulata は分布域の面からやや無理があります。
よって、触覚だけで判断するとS. galapagoensisが近いですが細部まで観察する必要があります。
こちらも一旦保留で。
現在流通する種類を検証した結果は以上の様になりました。
Darrin Vernier 氏の意見も同じで、表記は極力 Scolopendra sp.にすると良いとおっしゃっています。(S. robusta やS. gigantea についてご説明されています)
Darrin Vernier. Ghosts, Centipedes, Power Feeding, & Pine. 最終閲覧日2021/3/17.
私の意見をまとめると以下の通りです。
「ペルビアンホワイトレッグジャイアント」
S. gigantea → S. galapagoensis?
「ガラパゴスジャイアント」
S. galapagoensis
正しい?
「ペルビアンオレンジ(ロブスタジャイアント)」
S. robusta → S. sp. (一旦保留)
「ペルビアンタイガー」
S. viridicornis → S. sp. (一旦保留)
「ペルビアンブラックヘッド」
S. hermosa
正しい?
「ベネズエラブラック」
S. gigantea
正しい?
「ベネズエラゴールデン」
S. sp. → S. gigantea?
いかがでしたでしょうか。門外漢の一意見ですので、皆様のご意見もお聞かせください。
かなり混沌としておりますので、ほとんどsp表記しておくと良いと思いますよ。
繁殖させるのであればハイブリッドにならないようご注意を。
当店では基本的にCBをメインで扱うため、ムカデの取り扱いは少ないですが
一応貼っておきます。↓↓