ウサンバラオレンジバブーンと呼ばれるタランチュラをご存知でしょうか。


学名はPterinochilus murinus。アフリカに分布するタランチュラ(バブーン)です。


分布域は非常に広く、多くのカラーフォームが存在します。




日本ではこの学名のタランチュラは大抵ウサンバラオレンジと呼ばれていますが、「ウサンバラ」というのはタンザニアとケニアの国境にある山脈の名前で、この種類はウサンバラ山脈固有種であるというわけではありません。


よって、ウサンバラ山脈で採取された血統でない限り「ウサンバラオレンジ」というコモンネームはどうなのか考えモノです。




海外や一部日本人は総称してゴールデンスターバーストバブーンやオレンジバブーン、スターバーストバブーンと呼んでいます。当店でも「スターバーストバブーン」を採用していきます。







さて、カラーフォームについて具体的に紹介していきます。









BCF 



BCF


Brown Color Form (茶色型)の略で、ぱっと見 黒にちかい体色です。焦げ茶色、みたいな感じです。

Blueではないからお気を付けを。青い個体がいたらおったまげますわ。Black はかなり理解できますけど一応BrownのBです。Bから始まる色っていっぱいありますね。




・BCF テテ

モザンビークのテテという場所が原産地になります。2014年に初めて発見されたとされています。

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・BCF ミクミ

タンザニアのミクミという場所が原産地です。ミクミの個体群は2016年にペットとして流通しています。

最初はDCF表記でしたが、DCF B/Zや、DCF キゴマよりは BCF テテに似ているということで扱いが難しい個体群です。

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↑テテの場所はココ





DCF



DCF Kigoma

Dark Color Form(暗色型)の略で、その名の通り 体色が暗いです。脚の色合いはBCFと同じ感じですが、背甲は割と明るい色をしております。


これが一番個体数の多いカラーフォームとされています。


ボツワナ、ジンバブエ、ケニア北部、タンザニアのキゴマ、タンザニアのミクミが原産地です。

最近はキゴマ原産のDCFが流通しているようです。タンザニアのミクミの個体はBCFのようにも見えることからBCF表記の場合もあるようです。

上記BCFを参照してください。




・DCF ボツワナ/ジンバブエ (DCF B/Z)


特にペットとして流通しているDCFはジンバブエとボツワナの国境付近で採取された個体と言われており、しばしば DCF B/Z と表記されます。

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・DCF ケニア北部 (DCF Kenya)


ケニア北部にはDCF、南部にはTCFが存在し、ケニア全体でみるとTCFの方が個体数が多い様です。


・DCF ミクミ →BCF ミクミ


タンザニアのミクミという場所が原産地です。ミクミの個体群は2016年にペットとして流通しています。

最初はDCF表記でしたが、DCF B/Zや、DCF キゴマよりは BCF テテに似ているということで扱いが難しい個体群です。

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・DCF キゴマ (DCF Kigoma 又は DCF KGP)


タンザニアのキゴマ原産で、2016年頃からペットとして流通し始めました。


KGPと略されることもありますが、これはKigoma National Parkの略です。 

上の画像






場所はこんな感じ(ミクミ含)。場所だけ見るとザンビアにもいそうな気がしますがどうなんでしょうね。






OCF (UMV)



UMV 


Orange Color Form(橙色型)の略で、その名の通り オレンジ色です。綺麗。これが「ウサンバラオレンジ」でイメージするカラーフォームになります。ウサンバラオレンジでググると大抵これが出てきます。


タンザニアとケニアの国境にあるウサンバラ山脈原産で、元々UMVと呼ばれていました。


UMVはUsambara Mountains Variantの略で、ウサンバラ山脈で採れた個体ですよ~って意味です。なぜ変わってしまったのかと言いますと次項のRCFの発見が理由です。




OCF ムワンバ (P. murinus "Mwangwamba")


Pterinochilus sp. "Mwangwamba"という名前の個体が一時期流通しましたがそれは現在


P. murinus OCF "Mwangwamba"やP. murinus "Mwangwamba"とされています。Mwangwambaはケニアのウサンバラ山脈の中の地名です。










RCF



Red Color Form(赤色型)の略で、毛が赤く、全体的にド派手。本種のカラーフォームの中では一番派手です。綺麗。

こちらもウサンバラ山脈原産(ケニア、タンザニア)で、元々オレンジ色の個体しか知られていなかったUMVですが、赤色っぽい個体が発見されたことによりオレンジ色のがOCF、赤色のがRCFとなっております。

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つまりUMVはほとんどが現在のOCFであるということです。


但し、UMVをOCFとRCFの中間の発色の個体に充てるとする意見もあります。


ラベルは大事なので無闇に変えないように。




ウサンバラ山脈の場所はココ。タンザニアとケニアとの国境ですね。






TCF



Typical Color Form(典型色型)の略で、ケニア南部とモザンビーク南部原産です。


DCFが一番多いカラーフォームと言われていますが、

なぜかこれがTypicalとされているようです。


ペットとして流通しているのは UMV/OCF が一番多いですがね...




・TCF Southern Kenya


ケニアでは北部産の個体はDCFで南部では低地がTCF、ウサンバラ山脈でOCFとなります。




・TCF Mozambique


最近流通が多いタイプです。おそらくモザンビーク南部原産であると考えられています。モザンビーク北部ではBCFが存在します。

地の色は黒っぽく、毛が赤いタイプです。

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場所はこんな感じ。ウサンバラ山脈を挟んでいることから地理的にはやや遠い2か所です。










Classic



割と古くから流通しているタイプで、classicとつけられています。OCFと似たような色合いですがこちらの方が橙色というよりやや黄色い雰囲気です。産地はおそらくウサンバラ山脈系かと思われます。


TCFとclassicを同義とする場合もあるみたいですがTCFモザンビークとclassicでは色が違います。







SCF (Kalahari Form)



Silver Color Form(銀色型)の略です。Kalahari Formとも呼ばれ、カラハリ地方に存在するとされています。2008年頃から使われ始めたカラーフォームですが実際にペットとして流通しなかったことから真相は不明。1枚の写真しか存在しないみたい。






ちなみに本種はOBTと書かれることがありますがこれはオレンジバブーンタランチュラの略です。カラーフォームではありません。注意!


オレンジバイトシングとかの略っていう人もいます。

また、OCFの代わりにOBTと表記する人もいるみたいですけどいやぁどうなんでしょう。 






さて、本種の記載論文を読んでみましょう。




Pocock, R. I. 1897. On the spiders of the suborder Mygalomorphae from the Ethiopian Region, contained in the collection of the British Museum. Proceedings of the Zoological Society of London 65(3): 724-774.




Pterinochilus murinus という学名は1897年にPocock先生によって付けられました。論文を読んでみると753ページに本種の記載がありました。


ロカリティ(Loc.)は"Ugogo"とありました。おそらくタンザニアの地名かと思います。(違ったらごめんなさい)


タンザニアだとDCFかOCF(UMV)かRCFですね...




また、博物館に収蔵されている個体は"Mombasa"産とビクトリア湖の北東産とありました。




(ホロタイプを指定していないようです)




Mombasaはケニアの地名で、タンザニアとの国境近くです。ウサンバラ山脈が割と近いです。


ビクトリア湖はケニア、ウガンダ、タンザニアとの間に位置する大きい湖ですね。北東ということはケニア領でしょうね。


ケニアはDCFとTCF、OCF(UMV)がいますね。




つまり原記載の個体がどんなカラーフォームなのか場所からは判断できない状況です。原記載論文をよく読むと、体色は"uniform mouse-brown, with little white tufts of hair at the extremities of the femora, tibiae, patellae, and protarsi of the legs. "とあります。


基本色はmouse-brown。。。どんな色だろうと検索してみると、"Brown mouse" がいっぱい出てきました。なるほど。こんな色か。OCFやRCFはまずなさそう。TCFだとBrown要素が少ないような...

となるとDCFかBCFっぽいな....




更に、稀に P.murinus "mamillatus"という表記を見かけます。


これはシノニムになった旧P. mamillatusによるもので、1906年にオスが記載されています。産地は"Deutsch Ost-Afrika"となっています。ドイツ領東アフリカということですね。もう少し詳しい場所が欲しかった...


2000年にPetersさんが出版した、写真付きの本ではウサンバラ山脈の個体がmamillatusで、他産地がmurinusになっていました。写真もmamillatusはOCFのような色でmurinusがDCFのような色でした。


Peters, H.J. 2000. Tarantulas of the world: Kleiner Atlas der Vogelspinnen - Band 2.




つまりP. murinus "mamillatus"という表記はUMV系に充てられた名前の様です。









番外


ついでに同属別種についても写真がありますので貼っておきます。



Pterinochilus lugardi

こちらはP. lugardiという種類で、P. murinusと同属別種の種類です。
コモンネームはグレースターバーストバブーン、ドドマバブーン、フォートホールバブーン、タンザニアブロンドバブーンと言います。

P. murinusとよく似ています。昔はペットルートでP. murinusとして出回っていた時期もありました。
1919年にIdiothele pluridentatumという学名もありましたが2002年に本種のシノニムということになりました。他の同属種と生活様式がやや異なり、地中棲傾向が強く、トラップドアを展開することが知られています。



いかがだったでしょうか。


くれぐれも混ぜないようにお願いしますよ!! 


雑種を作らない為に雑種がなぜダメなのか




カラーフォーム以降、例えばどこのDCFか分からないけどとりあえずDCF、というものを繁殖させるかどうかは人によりますね。


僕は別にいいとは思います。DCF "hobby"といった形でね。


ただ産地情報がついている個体を入手したのであれば我武者羅に同産地でペアをそろえましょう(笑)




当店では現在classic、DCF、BCFを販売中です。他のカラーフォームに関しても在庫できるよう努めます!要チェックでお願いします!


但し性格は荒いので初心者の方はご遠慮下さい...