雲南省のScorpiops属について書きます。


結論だけ先に述べておきますと、

この属は混沌としておりますので、よほどちゃんと同定できない限り繁殖には使わないでください。


一昨年の流通

一昨年にEuscorpiops vachoni として雲南省から黒い中型サソリが多く流通しました。

日本とヨーロッパにそれなりな量が流れ、日本国内では数十匹が流通していました。

うちでは10匹を国内輸入業者から購入し、うち数匹を販売に回しました。

今年ヨーロッパから数匹が輸入されたようです。


うちの飼育個体が死亡後 鋏の触毛孔配列を確認したところ、vachoni 以外にも数種類が紛れていることが発覚しました。この事実に気づいている人は日本ではおろかヨーロッパでもはほとんどいないようです。


実は雲南省には非常によく似た種類が8種類程生息しており、同定は非常に困難です。

「蠍大図鑑」をご購入頂いた方はそちらを見て頂けると分布域等を詳しくご覧いただけます。


蠍大図鑑 253ページ


実際に見てみましょう





いかがでしょう?全部同じに見えますよね。僕もそう思いました。しかし全て別種です。

おそろしいですよね....


雲南省に分布するScorpiops

雲南省に分布するScorpiops属は以下の通りです。


Scorpiops jendeki

Scorpiops kubani

Scorpiops puerensis

Scorpiops shidan

Scorpiops vachoni

Scorpiops xui

Scorpiops yangi

Scorpiops zhangshuyuani


また、現在はScorpiops vachoni のジュニアシノニムですがScorpiops validus という種類がいて、これは独立種なんじゃないかと言っている人も多いです。


注意点ですが、これらは以前Euscorpiops属に属していましたが去年の分類でScorpiops属に移行しました。

Euscorpiops → Scorpiops


これらは大体どれも黒くて中型の扁平なサソリです。

見分け方は鋏の触毛孔配列やCL/CW比くらいです。産地情報がかなり詳細に正確に分かればもう少し絞れるとは思いますが。今回流通したものは全て「雲南省産」とだけしかわかっていません。


Scorpiops jendeki は雲南省の種類の中では判別しやすい方ですが、チベットのS. tibetanusなどとの判別は非常に難しいです。